蒼詩集

愛や不安や葛藤などを言葉にして綴るポエムです。あなたの心に何か響くものがあれば幸いです。コメントも頂けるとありがたいです。

夢見た大人


小さい時いつまでも子ども扱いされるのが嫌で


早く大人になりたいと思っていた。


自分でなんでもやりたくなった。


自分はもう大人なんだって。




何度目の四季を巡り


おもちゃのコインは硬貨に変わり


ペダルをついた車はガソリンを飲む物へと変わった。


よだれかけはレストランのナプキンに。


そして


大きかった親の背中が



小さく見えた。



ようやく大人になれた。



けど



電車に揺られ


たくさんの書類をまとめる日々。


たくさんの人の中にいるのに


人ごみの中で埋もれていても


隣の人の温度を感じることはない。




「それはダメ!」


「なんでそんなミスするかなー」



小さい頃夢見た大人は


いつになっても叱られていて


泣きたくなって


慰めてほしくて。



大人の形をした鋳型に


早く大人になりたくて飛び込んだのに


出来上がった大人は脆くて。



あの時夢見た大人。


以前より面倒なことが増えただけで


子どもの僕から何も変わってなかった。



ただ、そう気づけたことは



僕が「大人」になれたってことだ。



蒼連

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